石の上にも3年、継続は力なり、等など「続けること」の美徳は日本人の心に
しっかりしみついているのですが・・・それが逆効果になることがあるかもし
れません。
私は創業期の事業構築の基本姿勢は「トライ&エラー&修正」だと思っていま
す。事業が小さいうちに、成果を生み出すための仮説を立てて、それを検証し
ていくのです。
簡単に言うと、何をやったら上手くいくのか、失敗したり、成功したりしなが
ら、自分なりの成功法則を見つけていこうということなのです。
(とは言っても、どのような方法もある程度まで積み重ねないと効果が出ない
sので、たしかに継続していくことは必要なのですが・・・)
ビジネスが上手くいかない、思い通りの成果が出ないと嘆きながら同じことを
続ける前に、「上手くいかない方法を、いくら続けても、成果は出てこない」
ことを認識して、少ない投資や労力でトライ&エラーを繰り返すのです。
効果的な方法が見つかったら、そこに重点的に力を注ぐのです。
例えば、製造業者にありがちなのが、サンプルが少ないとブランドの雰囲気が
わかってもらえないし、なによりバイヤーに購入してもらえないからと、盲目
的に商品点数を増やすことです。とにかく成功するためには絶対条件だとばか
りに、とにかくサンプル点数をどんどん増やしていくものです。
あれもできる、これも作れる、こんなのはどうかしら、ととにかく思いつくも
のをドンドン作ってしまうのです。
では、サンプルが増えれば本当に売れるようになるかというと・・・そういう
ものではありません。サンプルが多ければ売れるのなら、多くの製造業者はほ
っといても売れてしまいますよね。
でも売れないのはなぜか、それはブランドの価値が伝わらないからなのです。
価値が伝わらない方法で、点数が増えると、ブランドのイメージが混乱します。
安売り店の大量陳列みたいになってきます。何でもごちゃ混ぜにするバーゲン
会場と言ってもよいでしょう。それでは逆に価値が下がってしまいます。
もっと1点、1点の商品価値や、ブランドの価値を高める方法をとらなければ
ダメなのです。
しかし、ずっとものづくりを続けてきた職人さんに、ブランドイメージを作ら
ないと売れないですよとアドバイスしても、本人は「何をしたらよいか」わか
らないのです。というより「知らない」のです。
職人さんに「自分のつくっているものの特長は何ですか」と聞いてもわからな
いのです。
で、結局、このわからない職人さんは何をするかというと、ブランドイメージ
が伝わらないのは、デザインが良くないから、時代にあってないから、とデザ
インを変更させてまたサンプルを増やします。そうするさらに、デザインがば
らばらになってきて、余計にブランドイメージが不明瞭になるから売れるよう
にならないのです。
ということは、同じ方法を続けても成果は生まれないのです。
しかし、多くの場合
(1)思い込みが強くて、自社ブランドについての客観的な判断ができない。
(2)自社に都合が悪い情報は遮断し現実逃避する。(批判は聞かない)
(3)変化を嫌う。新しい方法をとることに不安を感じる。
今まで通りのやり方を継続するほうが効果的だと盲目的に信じる。
(4)成功体験が無い(もしくは成功体験を知る機会が無いので)、
どのような方法が効果的か知らない。
(5)成功に対する目標値が低く、圧倒的な成果を求めようとしない。
などの理由により、今まで通りの方法が継続されることが多いのです。
今まで通りのやりかたを続けるのは精神的に楽です。
「上手くいかないのは、根性が足りない」「上手くいかないのはまだまだ自分
が未熟だから」と考えるタイプは、同じことを継続したがるようです。
確かに自分を反省するのは必要ですけど・・・反省のピントがずれているので
すが、本人は気づかないのです。
気づかないから同じ方法をとってしまうのです。
気づかないから他の方法の必要性を感じないのです。
成果を生むためには、今までと違うやり方を試さなくてはいけないのです。
大きく変える必要はありません。小さくいろいろと試せばよいのです。
上手くいくと思える方法が見つかってから、そこに予算や資源、労力を重点化
していけばよいのです。一か八かの賭けにお金をつぎ込むのは賛成できません。
上手くいく方法が、自分でわからないなら、知人や関係者など客観的に判断し
てくれて、ビジネスを応援してくれる人に聞けばよいのです。
先日の台東区若手経営者セミナーの講師が「素直な人ほどビジネスが成功す
る」、「素直じゃない人は絶対成功したビジネス経営者にならない」というの
は、言っていました。
素直なこと=アドバイスを素直に受け入れること=新しいことにも積極的に
チャレンジするなのだそうです。
素直だからすぐに実行してみるのです。ダメなら辞めればよいのです。
やる前からあれこれと言い訳ばかり考える人は、おそらく経営者に向かないの
ではないでしょうか。