起業者や製造業者のビジネスプランを見せてもらうことがありますが、その市
場性を客観的に調べてないし、競合についての意識が欠けているし、
まるで机上の空論というか、単なる思いつきのアイデアだけをビジネスの拠り
所にしている・・・と思うことがあります。
この思いつきをビジネスにする場合に上手くいかないタイプはいくつかあって、
まずは、競合状況を調べてなくて、既に市場が競争激化状態になっているのに、
「話題になっているテーマだから売れるだろう」などと考えてしまう場合。
競争が激化しているような場合、だいたい低価格競争が進み、利益が出にくく
なっていますから、起業者や中小企業には向かないことが多いのです。
後発で参入する場合、よほどの差別化が図れないと市場参入できないし、大手
とのコスト競争を覚悟しなくてはなりません。
もう一つは、
市場ニーズというか、その商品を欲しいと思うお客様がいるかどうかを下調べ
しないで、「このアイデアは面白いから、誰か欲しい人がいるはず」と考えて
ビジネスにしてしまうことです。
ニッチ(すきま)市場を狙おうという意図なのですが、ターゲットがほとんど
存在しないこともあるのです。
自分が欲しいから、他の人も欲しいはず、というのはある意味で正解です。
しかし、自分以外に欲しがっている人がどのくらいいるのか(ニーズ)
そのアイデアをどうやって理解してもらうのか(啓蒙活動)
その欲しがっている人をどうやって集めるのか(マーケティングコスト)
等を考慮していくと、アイデアは面白くても、ビジネスとしては成り立たない、
ということもあるのです。
とくに、まだほとんど世の中に知られていない導入期の商品は、その商品のメ
リットや使い方などを十分お客様に認識してもらわないと、売れるようになり
ません。
この啓蒙のための宣伝コストがかかる商品は小資本で起業する場合にはあまり
適していません。
また、宣伝コストを十分にかけて、「さぁ売れるようになってきたぞ」と思う
タイミングで大手が低価格で参入するという場合も多いのです。
↑
ファッション、デザイン関連でも大事に育てた商品を、大手にコピーされると
いう話はよくききます。
また、欲しがっている人がどのくらいいるのか?というのもかなり大事なポイ
ントです。
ニッチ(すきま)市場を狙うんだ、とか、商品にはオリジナリティが大切とい
っても、それを購入するお客様が全くいないのではビジネスになりません。
セレクトショップとか小売店等と取引をしたいのなら、「個性的だけれど、誰
が買うか全くイメージできない」なんて思われるようでは取り扱ってもらうこ
とが難しいのです。
「個性的で、皆が欲しくなりそう」という評価を得たいものです。
さて、都会のセレクトショップは有名ブランドが多いから、地方にいけば個性
的なブランドでも売れるのではないか、と勘違いする人もいますが、これは逆
です。
むしろ、地方のセレクトショップのほうが商圏人口が少ないので、ショップ経
営を成り立たせるためには、安定した売上げが見込める実力派ブランド中心に
なります。
何百人に一人に買ってもらえればよいという「確率戦」的な売り方をしたいな
ら、できるだけ商圏人口が多いところや、商品との接点を増やすなどで、母集
団の見込み客数を多くする必要があるのです。
そうすると、買う人がいるかどうかわからない個性的な商品を売るためには、
それを買ってくれるお客様を見つけるコストがかかりすぎて、結局多少は売れ
てもビジネスにならない、という場合もあるのです。
では、どうしたらいいのか、ということですが、例えば、
旧態依然の古い慣習でビジネスをしている業界に
新規性のあるデザイン、新しいビジネスモデルで参入することではないでしょ
うか?
既得権に守られたり、革新する努力を放棄した業界や商品に、
異業種で成功し確立されたマーケティング手法や新鮮なデザインを持ち込むの
です。
↑ベンチャー企業はこの方法論を取ることが多いのですが、
ファッション業界ではあまり例がありません。
起業家の最大にして唯一の強みは、納得するまでビジネスプランをブラッシュ
アップできることです。
旧態依然とした参入しやすい市場や、確実に儲かる方法や商品を見つけ出すま
で、何度でもプランを練り直すことができるのです。
ビジネスは始めてしまうと方向性を変更することが、ものすごく難しくなりま
す。上手くいっても、行かなくても身動きが取れなくなるのです。
だから、ビジネスを始める前に、何度も何度も儲かる方法を検討できる起業家
は既存の企業よりも、有利なのです。
でも、その有利さを活用しようと考える人は、他業界には多いのに、ファッシ
ョン業界にはほとんどいないのも、また事実なのです。