多くの企業やデザイナーが悩んでいるのが、自社ブランドのイメージを高くす
るために売り先を絞り込みたい。しかし、絞り込むと売上げが小さくなってし
まう。売上げを大きくしたくても、知名度が低い販売先には、イメージが悪く
なってしまうので売りたくない。というものです。
さて、このような悩みを抱える企業に話を聞くと、売り込みたい先の候補に上
がるのは、たいてい有名セレクトショップだったりします。どうしてそこに売
り込みたいのか?と聞いていくと、他の店をあまり知らないから、ということ
もあるようです。
さてブランドイメージというのは、どうやって形成していくか、しっかり考え
たことがあるでしょうか?
考えたことが無い企業に限って、イメージ戦略もどきのことを語ることが多い
ような気がします。イメージが合わないということばかり気にします。
ほとんどの企業やデザイナーでは、このブランドイメージ形成過程を理解しな
いままに、「著名店での取り扱い=ブランドイメージ」だと考えています。
しかし、ここが大きな間違いで、ブランドイメージ=「顧客×その顧客が持つ
イメージ(熱中度や愛着度)」の総和だと考えてください。
(熱狂的なファン)+(固定客)+(たまに購入)+(なんとなく好意)+
(嫌い)のそれぞれが持つイメージを足していったものです。
そのブランドを好きな人が多ければ、ブランドイメージも良くなります。「ど
うしてもそのブランドじゃなきゃ嫌!」「そのブランドならいくらお金をかけ
てもいい」という熱狂的なファンが多ければ、高額でも売れる強いブランドに
なります。
ブランドイメージが良いというのは、これらの各段階での支持者が多く、それ
ぞれの意識の中のシェアが高いということです。
簡単に言うと「人気がある」ことに他なりません。
ですから、ブランド構築にあたっては、
1:核となるイメージや商品を発信
2:コアな支持者を作る←ありきたりの商品では支持者が作れない。
3:売れたという成功実績を作る←ここが大事!なのに考えない人が多い。
4:実績によりイメージを高め、さらに固定客化、信者化する
というプロセスが基本です。
多くの人に少しの好意を寄せてもらうか、それとも少数の人に熱狂してもらう
かで、ブランドの組み立ては違いますが、小規模ブランドの場合は、熱狂的な
信者客をどれだけ作れるか、に重点化したほうが早く成果が出やすいようです。
さて、ブランドイメージは顧客数にも密接に関係します。狙って作るブランド
イメージもありますが、結果として「売れている=支持者が多い」ことでブラ
ンドイメージがついてくるのです。「売れていない=支持者がいない」のに、
販売先を絞ることばかり考えるのは、本末転倒です。
展示会等で、自社商品を気に入ってくれても、知らない店だから売りたくい、
と断ってしまう(趣味で仕事をしているような)企業もあります。
私だったら、その知らない店のことをまず調べます。その担当者に電話をした
り、できれば店を見に行って、直接話をききます。もちろん全くテーストが合
わないのなら、売るべきではありませんが、店舗が小さくても、その店のバイ
ヤーが熱狂的なファンになってくれれば、成功実績を作るのも容易です。
店舗の規模やイメージではなく、その店の中で自分のブランドの成功実績を作
れるか?が販売先選びのポイントです。
それを調べもしないで断っているようでは、イメージのことを言う前に、「ビ
ジネス」をする気があるのか、確かめなくてはなりません。
もし本当に商品力があるのなら、セレクトショップの名前に頼らなくても、ど
のような店にあっても(安売り店以外は)良い顧客に出会えるようです。良い
顧客に買ってもらうことで、ブランドイメージが高まります。収益も安定して
いきます。「自社商品で、取り扱い店の客を増やしてやる!」ぐらいの気概は
持って欲しいものです。
さて、狙いのセレクトショップに商品を取り扱ってもらえるまで、他の店に売
るのを控えるというは、どうなのでしょうか?
まずは、取引したいといってくれている店に協力してもらって、しっかり販売
して、圧倒的な売上げ実績を作り、その実績を基に狙いのショップに売り込み
にいくことをお勧めします。イメージではどうしても負けてしまう海外の著名
ブランド等に対抗するには、特定のファンに圧倒的な人気を得ている証拠を見
せることが不可欠です。
その売上げ実績と、実績を作る過程で得られた自信を持って、
「○○○や△△△等のショップで1番人気になりました」というのと、
何の根拠もなく、自分のデザインに対する思い入れだけで、
「セレクトショップでは貴社への持込が始めてです」というのでは、
どちらが、バイヤーにアピールするでしょうか?
とにかく、創業期ブランドや無名の企業に必要なのは、売れた実績=支持して
くれる顧客がいる=イメージが良い、ことの証明。なのです。
結論としては、売り先を絞るのは、十分な顧客がついてから心配すれば十分、
ということです。