目標に出会うということ

来年の入居者募集が始まっていますが、おそらく入居希望の方たちは、申請書
類を前にして途方にくれているかもしれません。
申請書類に記入するためには、
・自分のやりたいこと(目標)
・自分のできること(得意なこと)
・自分のやるべきこと(事業プラン)
について、きちんと直面して、さらに文章にすることが求められるからです。
とくにファッション関連のクリエイターとして創業する場合、針と糸と布があ
れば、とりあえずカタチを作ることができて、それを友達に売ったり、バザー
に出したりすることから売買が始まります。そのまま仕事にしていくうちにク
リエイターになったという人も少なくありません。
さて、いつのまにかクリエイターとして創業という人からもう少し話を聞いて
いくと
A)他のことをやりたくないのでクリエイターになった
B)クリエイターになりたくてクリエイターになった
という2通りのパターンがあることがわかります。
例えば前者のA)他のことをやりたくないのでクリエイターになったというのは、
「会社で事務ばかりしていて嫌になったからクリエイターになった」
「営業や販売が向いていないから」「会社の人間関係が向いていないので独立し
た」という理由が目立ち、極論するとクリエイターでの創業を嫌な仕事からの
逃げ道としているともいえます。
デザビレの面接でも、このタイプの人に目標や将来やりたいことを聞くと、と
ても漠然としていて、「将来お店を開きたい」ぐらいしか答えられなくて、さ
らに「そのお店はどんなイメージ」と聞いても考えたことがないから答えに窮
したりします。
もしくは、自分自身の目標を自分の言葉で語るのではなくて、一般的な「目標
らしきもの」を説明するだけだったりします。
目標が無いままだと、ただ毎日の仕事に追い立てられるように仕事をするだけ
になりかねません。
まるで膨らませた風船を放すと最初は勢いよくあっにちいったり、こっちにい
ったりしながらしぼんで落ちるように、事業も萎んでしまうこともあります。
また、事務や営業や接客が嫌だとか、人間関係が嫌いだから「ものづくり」だ
けしていたいという人がいますが、皮肉なことに独立したほうが、そのような
ものづくり以外の仕事の比重が増えてしまうし、責任が重くなるものです。
B)クリエイターになりたくてクリエイターになったという人の場合、将来なり
たいブランド像の目標や、やりたいことがはっきりしている場合も多いのでは
ないかと思っています。
例えば、憧れのデザイナーや経営者がいたり、目標とするブランドがあったり、
自分が理想とするビジネスモデルがあったり、どこに行きたいのか方向がしっ
かり定まっているのです。
この「やりたいこと」=目標がハッキリすることで、
「自分のできること」=得意なことを、どう活かしていけば目標に近づけるか、
という「やるべきこと」=事業計画が生まれてきます。
目標に到達するために、どうすれば自分の才能を活かせるかというプロセスを
考えることになります。
さて、A)とB)のどちらが良いとか悪い、正しい誤りというのはありません。
目標が無くても成功する人もいれば、目標があっても上手くいかない人もいます。
ただ、目標がはっきりしている人のほうが、創業支援とかビジネスインキュベ
ーションを有効に活用できるだろうと思います。
どこの施設でも利用できる年限が決まっています。目標を決めるために悩んでい
ても、事業をしていても、一定の時期になったら退出しなくてはならないのです。
それならやるべきことをはっきりさせてから入居しないともったいないと思って
しまいます。
■目標がないといけないのか
さて、明確な目標がなければ創業してはいけないのか、という問題があります。
私はそんなことは無いと思います。
私自身のことを話すと、31歳のときに会社をいきなり退社して独立しました。
やりたいことがあって会社を辞めたのではなくて、会社との仕事に対する考え方
の相違がきっかけで、これからの仕事の目処も無く、稼ぎも無い状況にいきなり
飛び込んだのです。
そのため退職してから、何をしたいのか、何をすべきなのか、自分には何ができ
るのか、ということを考える時間だけはタップリありました。
そのときに考えたのは、
・これから多くの人に求められる仕事をしよう(市場が成長する)
・自分の苦手なことではなく、得意なことをしよう
・どうせやるなら他の人がしていないことをしよう
・まずはお金よりもやりがい(人から喜ばれる)のある仕事をしよう
ということでした。
これらの指針を持ちながら、何を仕事にしていこうか、と悩みながら、あちこ
ちの会合やセミナーに参加したり、人に会いにいったり、あれもこれもといろ
いろ試行錯誤してみました。
さて、そのときに自分で感じたのは、
目標が無い状態のモヤモヤしたやり場の無い気持ちのようなものはいくら悩んで
も解消されるわけではないということです。
しかし、いろいろなことを動き出してみると、目標が見つかり、やるべきこと
がハッキリすると霧が晴れたようになり、仕事に取り組むパワーが生まれ、ワ
クワク感で満たされた状態になったのです。
目標が生まれると、「アレもやりたい、コレもやりたい」「やりたいことが多
くて時間が足りない、自分の能力が足りない」という気持ちが起こってきました。
「どうしたら目標に近づけるのだろう」と頭を使うようにもなりました。
そのとき、目標と言うのは、自分の内面を見つめれば悩んでいれば見つかるもの
ではなくて、どんどん外に出て、人と出会って、刺激を受けることで見つかるの
ではないかと思いました。
異論もあるでしょうが「目標は自分の中ではなく、外にある」ような気がします。
「自分の目標は何だろう」「やりたいことは何だろう」と何百回、何千回自問
しても、どうどう巡りで答えをだすことは難しいのではないでしょうか?。
クリエイターは手を動かしていれば、目標が見つかると考える場合もあるよう
ですが、どうしても今の自分の枠から外に出られないのです。
逆に外と出会うこと、
  自分を感動させてくれた出来事、
  憧れるような人やブランドとの出会い、
  人から感謝されたり喜ばれたりという体験、
  自分の成し遂げた仕事に対する充実感 等など
外に向かってに働きかけたり、自分以外の人との関係性の中から、目標の小さな
種が生まれ、それがどんどん育っていって大きな目標に育つのではないでしょうか?
つまり、明確な目標を得るためには、毎日同じことの繰り返しだけではなく、
とにかく動き出して、今までとは違う世界を経験してみることが必要です。
それで、「目標に出会う」のだと思います。
申請書を書くときの参考になればいいのですけど。

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