鈴木さんはどんなアドバイスをするのですか?と聞かれることが多いのですが、
どうしても相手に合わせて対応していくので、どうしても質問に答えにくいの
ですが、普段アドバイスすることから数例を挙げたいと思います。
今回は会社の強みに関することです。
●「あなたの会社の強みは何ですか」
仕事で行きづまってくると、どうしても自分の業界の先行きが暗いと思ってし
まいます。社長は、その業界の中でキャリアを積んできているので、「この先
がんばっても、この業界は良くならないよ」と言います。
しかし、実力のある企業でも、自社の「強み」に気がつかず、その強みを発揮
していないことが、仕事が行き詰っている原因とは考えないものなのです。
実は上手くいっていない会社ほど、社長が社長自身や自社の良いところを知ら
ないのです。
私はよくアドバイスの最初に「一番評価が良いのはどの商品ですか」「取引先
はどこを高く評価してくれていますか」ということを聞きます。
自社の強みを知っている会社は、この問いにすぐに答えられます。
考え込むようであれば、本当に強みが無い平均以下の会社なのか、それとも気
がついていないのかどちらかです。
その上で商品や営業、販促について説明を聞けば、前者か後者かわかるのです。
「強み」に気がつかない会社の場合、いろいろな角度から質問をぶつけていく
と、どんどん強みの輪郭がはっきりしてきます。
それは、
・社長の行動力やバイタリティであったり、
・自発的に行動する優秀な社員
・他に競合がいない個性的な商品だったり
という顕在的な強みの場合もあれば
・社長が頼りなくても周りが自然に助けてくれる社風
・人との出会いを大切にする性格だったり
・社長の趣味や得意分野が仕事に活かせる
というような、よほど掘り下げないとわからないものがあります。
自分では気がつきにくい強みを発見するには、第3者から質問してもらったり、
判断してもらうことも効果的です。(どのような質問かはまたの機会に)
まずは、それを自覚して、それを「強み」として宣言することから始まるのだ
と思います。
●「日本一をめざしましょう」
どんな業種でも、ジャンルを狭めていくと限りなく「日本一」に近いポジショ
ンにどこかしら近づきます。
大市場でのナンバーワンではなく、限りなく狭い市場でのオンリーワンになる
のです。5年前の市場だと、オンリーワンになるのは自己満足だけの世界で終
わる場合がありましたが、インターネットの普及により、日本中、世界中から
同じニーズをもったお客さんを集めることができるようになり、今ではオンリ
ーワンであることが十分ビジネスになるのです。
「日本一○○○な△△△です」ということを自信を持っていえるかどうかです。
例えば、
「私のブランドは日本一襟のシルエットにこだわるシャツメーカーです」
「私の会社は日本一、西アジアのアクセサリーの品揃えが豊富です」
「私は日本一 靴底と歩きやすさの関係に詳しいです」
「私の会社は、日本一 人間工学関係の専門家のネットワークがあります」
「私の会社は 日本一 ユーザーの声を集めた帽子メーカーです」
等々いろいろな切り口があります。
売上げの日本一を目指しても目標が遠くて本気になれません。でも鮮やかな切
り口での日本一を目指せば、それがブランドの個性、特長にもなるのです。
これは製造業に限らず、ファッションブランドでも同じことがいえます。ブラ
ンドが小さいときには、なんでもかんでも手を広げるのではなくて、この商品
だけは日本一!と言えるものをまず作ることで、一点突破を図るのです。
●「下請けにならずに、先生と呼ばれるビジネスをしましょう」
私はビジネスにおいて大切なのは、取引先との主導権を握る関係を築けるかど
うかだと思っています。(何もけんかしろ、ということではないです)
常に相手にビジネスをコントロールされて、価格や納期や品揃え等について無
理な注文をつけられながら、頭を下げて取引をお願いするのか。
それとも自分の思うままの価格、納期、商品で、相手から『お願いします』と
言われてビジネスを進めるのか?
仕事の労力はあまり変わらなくても、そこで得られる「利益」や「誇り」や
「満足度」は圧倒的な差がつくのです。
このお願いしますと言われるためには、「自分と、会社と、商品をブランド化
させるようにプロデュース」していくことが大切です。
また、相手が求める情報、知識やノウハウを持ち、実践的な解決策を提案でき、
新たな価値を生み出すことができるか、ということも求められます。
つまりその道の達人、名人と呼ばれるぐらいにならなければ、と思うのです。
前述のように日本一という分野を作りあげていくことも効果的です。どの分野
で日本一になるか決めて、それに向けて情報やノウハウを集め、ネットワーク
を構築するのです。
「小売よりもユーザーニーズに詳しいニット業者」
「健康関連情報に詳しく、常に新たな提案をするOEM業者」
「NYのセレブファッションに詳しいアパレルデザイナー」
等など、単に商品をデザインして売るだけではなく、その商品の価値や、ブラ
ンドの世界を伝えきるだけの情報が必要なのです。
それができないと
「店頭データでは○○○が売れているから○○○してくれないと仕入れられな
い」と言われても、言い返すこともできなかったり、
「その商品はほんとうに売れるの?」と聞かれても、それに対して明確な理由
で相手に価値を伝えることができず、結局不本意な取引になったりします。
現在では、ファッションのような成熟した市場では「商品の見た目」での差別
化はどんどん難しくなっています。商品や会社の背景、社長の個性まで重要な
要素になっています。
だからこそ、自分をプロデュースして、ビジネスの主導権を握らなくてはなら
ないのだと思うのですが、いかがでしょうか?