相手の視点で考えてみる

私は、ここ10年ぐらい、ボランティア活動として、「人にやさしい」ファッ
ションとかお店作りの普及啓蒙活動をしていたので、地方の商店街に招かれて、
講演したりアドバイスすることも少なくありませんでした。
実際、お年寄りとか、体の不自由な人、外国人、子供連れ、いろいろな人から
「便利で安心して買い物ができる店」と支持されている店は、
実は地域の人気店だったり、根強いリピーターがいるのですが、
共通していることは、お客様の視点で店やサービスが改善されていることです。
逆に、売れていないお店の経営者と話をしていて気が付くことは、必ずと言っ
ていいほど、「お客様の視点」を無視して、「自分視点=店の都合」だけで
売場やサービスが提供されている、ということです。
例えば
 売場の小さな段差にお客様はつまづくのですが、
 お店の人は慣れているので、無意識によけてしまいます。
 だからお客様が危険だとは気が付きません。
 商品をたくさん陳列したいからと、高い棚の上まで使ってしまうと
 背が低いお客様が届きません。
 もっとアピールしないと売れない、とばかりに店先に立って、
 入り口をふさいでしまうと、お客様は敬遠したくなります。
 店員の目線だと掃除がされているのに、お客様の席から見えるところは
 ほこりが積もっていたり、汚れていたりすることもあります。
これらのことは、店の都合ばかりを考えていて、「お客様の視点」からの売場や
サービスの検証を行っていないことが原因です。そのため売場のアドバイスでは
お客様視点のワークショップを実施して、自ら気づいてもらうこともあります。
さて、これはお店の場合だけではなく
普段のビジネスの現場でも同じことが起こっているのではないでしょうか。
例えば、
○営業やプレゼンの現場では、
  自分:自分でよくわかっていることや前提は、普段あまり意識していないの
     で話し忘れてしまう。あえて言う必要はない。
  相手:まず前提や概要から話してくれないと、話がわかりにくい
  ということがあります。
  ですから、肝心のことを伝え忘れていて、話がかみ合わなかったりします。
○バイヤーから「これはどういう商品ですか」と説明を求められたときに
  相手:他との「違い」をできるだけ個性的なキーワードで教えてほしい
  自分:普段言葉を意識していないので、ありきたりの表現で伝えてしまう
     例えば、「高品質」「シンプル」とか「こだわりがある」など
  というすれ違いがおこっています。
  相手は「違い」を聞いているのに、他社と同じ言葉を使っていては
  違いや特長はわかりません。
○バイヤーが「どれが一押し商品ですか」聞いているのに、
  「みんな自信作です」と答えてしまうこと。
  相手:見せ筋、売り筋などの商品の役割を聞きたい。
  自分:どれもがんばって作って、良いデザインだからみんな自信がある
 という意識の違いがあります。「どれも自信作です」ということは、
 どの商品にも同じ=役割も特長も無い、と捉えられてしまいます。
ビジネスの現場では、考えていることを率直に伝える正直さよりも、
相手の求めている答えを提供する対応力が重要なのです。
相手に自分の想いやこだわりを熱心にぶつけていても、
相手が聞きたいことを、相手の立場や視点に沿って話すことができないと、
なかなか話が通じないし、理解力に乏しい、ビジネスセンスの無い人だという
レッテルを張られてしまうでしょう。
つまり「相手の立場では何を求めているのか」を推察することが大事なんです。
ということは、まず「相手理解」を深めるために、相手のことを聞いたり、
調べたりしなければならないはずです。
ある程度情報が集まることで、ようやく相手の視点に立つことができます。
プレゼンが上手い人=ペラペラと言葉巧みに説明ができる人、というイメージ
があるかもしれませんが、それよりも、適切に相手理解の元に、求められてい
る答を用意できる人のほうが、成果を上げています。
ということは、自分勝手な話上手より、相手の視点で考えられるほうが、
ビジネスでのコミュニケーションがうまくいくのだと思います。

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