「依頼する」文章の書き方

個人で仕事をしているクリエイターが、企業へと成長していく過程で、必要
になるスキルはいくつもありますが、その中の一つに「依頼する」=何かを
してくれるように相手にお願いするということがあります。
ビジネスは自分ひとりだけでは成り立たなくて、協力してくれる人、取引し
てくれる人に依頼をして、その相手が依頼に応じて動いてくれることで、前
に進んでいきます。
では、どうやって相手にお願いをしたらよいか、について考えてみましょう。
例えば私は、講演や原稿執筆、アドバイスを依頼されたりすることが多く、
多くの人からのいただいた様々な依頼文を読む機会があります。
メールや電話でも依頼もあります。
その依頼内容や文章により、こころよく依頼を受けることもあれば、お断り
することもあります。
その依頼を受ける、断るという違いはどこから生まれるのかを考えていくと
   「必然性」
   「意義」
   「誠意」
という3つのポイントがあって、それらが依頼主からの依頼の中にあるのか、
ないのか、きちんと伝わる表現になっているかどうか、
ということがポイントだと思うのです。
●必然性
必然性というのは「その人を選んだ理由」です。
たまたま偶然知っていたからではなくて、多くの候補の中からその人こそが、
この依頼に最も適している、という理由です。
ということは、必然性を語るためには、「相手を理解」していなくてはなり
ません。
相手のこれまでの実績や、仕事、考え方、特長などを知らなくては、相手が
依頼にするのにふさわしい理由を述べるのことができないのです。
この必然性をキチンと述べてないと
「別に他の人に頼めばいいじゃないか」という気持ちになってしまうし、
自分の特長などに対する理解が間違っていれば、
「知らないでいい加減に頼んできたんじゃないか」と思ってしまいます。
しかし、自分のことに対する理解や共感が納得いくものであれば、
そこに、依頼者と被依頼者との間に「つながり」が生まれます。
このつながりが、依頼を受けるきっかけになるのだと思います。
●意義
その依頼を受けたほうが良い理由を提示するということです。
もちろん依頼者の利益のために、相手にお願いしているのですが、
その依頼をする意義は何か、どのような成果が生まれるのか、
どのような未来があるのか、ということについて語るのです。
例えば講演を依頼するなら、受講してくれる人にどんな影響を与えて
それが、その人たちにどのように喜ばれて、どんな成果につながるか、
ということまであると、「やりがい」につながります。
●誠意
誠意という目に見えないものを伝えるのは難しいのですが、
私の場合、誠意というのは、相手が準備に費やした努力量として判断します。
例えば、依頼をする前に自分いろいろ試行錯誤して、苦労して、それでも
ダメだったから頼まれる、というのは悪い気がしないものですが、
ネットで3分調べれば分かるとか、電話帳を開けばすぐ分かるようなことさえ
自分で調べる努力もしないで、自分が楽をしたいから、労力を使いたくないか
らと手足のように使われるのは、いかがなものかと思います。
また、「必然性」や「相手理解」を深めるために、たくさんの資料を集めて、
事前に調べたりする努力をしていればいるほど、誠意が伝わると思うのです。
そこまでしてくれるなら、
こちらも期待に応えようと「返報性」の心理が働くのです。
■依頼する文章のフォーマット
また、依頼内容によっては一人に相談しただけで解決しない場合もあり、
そこからさらに何人かを経由して、その先の専門家に辿り着き解決
ということもあるので、文章にするのは大切です。
1)挨 拶
2)自己紹介 
   ・会社名、職種、氏名
・誰を相手にどんな仕事をしているか。別紙をつけてもよい
3)相手を知った経緯、相手をどう理解しているか
・相手の実績や活動などについて、どのように理解しているのか
・それらの活動についてどう感じているのか
4)依頼内容
   ・何をお願いしたいのか?を簡単にわかりやすく提示
5)相手にお願いする理由は何か
・どうして「あなた」を選んだのかという理由、必然性
・相手を選んだ理由は? 今回の依頼事項とどう関係しているのか?
 例:○著作を読んで○○について気づきを得ることができたから
  ×他にいなかったから ×他に知らないから
6)これまで、自分でどのように解決しようとしてきたか
・相手にお願いするまでに自分でしてきた試行錯誤や経緯などを
・自分の事情だけれど、相手には直接関係無いので簡潔に
7)具体的な依頼内容
・相手が判断するために必要な要素を忘れずに
・場所、時間、必要なもの、対象など。別紙をつけてもよい
※まだ依頼を受諾しているわけではないので、あまり制約しない
     OKをもらえてから、細部をつめていくこと。
8)意義:相手にお願いすることでどのような成果を期待するのか
・誰に喜んでもらうのか、それがどのように役に立つのか
・相手が協力したくなるような大義名分を提示する
9)相手のメリット、謝礼
・お礼をどのようにするのか。
   ・金銭で返せないときは、代わりに何を提示できるか
10)返事のもらい方
・初めての人に相手から連絡させるのは失礼。あらためて電話で確認
・相手に検討してもらい、判断は任せる
11)PS(追伸)
・個人的に伝えたいメッセージなど
参考文献:山田ズーニー著 「考えるシート」

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