ビジネスサポートセミナー「展示会で成功するブランド、失敗するブランド」 講演記録

「展示会で成功するブランド、失敗するブランド」
 ~合同展を活用して、ビジネスを加速する~
講演記録
講師 吉岡孝司 (合同展示商談会『FRONTIER』主催者)
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→受講者からの質問への回答はこちらから
ぜひ参考になさってください。
展示会で成功するブランド失敗するブランド 講演録
2005年6月22日(木)7時より台東デザイナーズビレッジにてファッションビジネスサポートセミナーをショールームにて開催。
講師に合同展を主催するフロンティアの代表吉岡孝司氏をお招きし「展示会で成功するブランド失敗するブランド」をテーマにお話を伺った。
50名の定員に対し多数の申込みがあり、入室できるかぎりの方にご来場いただくこととした。ファション創業支援セミナーはブランドを立ち上げて間も無い人のためのセミナーを行ってきたが、今年は踏み込んだ実務に直結したセミナーを予定しており、今回は秋から合同展や個展を開く人のために、展示会を活用してどの様に自分の作品を売り込んでブランド開発をしていくのか、お話をしていただきます。
● 吉岡:フロンティアの歴史は1994年9月にスタートし、その経緯は大阪の知り合いのメーカー2社より展示会の場所を探してほしいといわれたことから始まる。フロンティアでは合同展を年5回、12年で57回開催してきたが、出展するメーカーの意見を反映してきたことで12年続けられたと思う。
■Q:出展者をつかまえる苦労について
●吉岡:苦労は12年続けた今でもしているが、フロンティアは出展者が他の出展者を紹介し参加することが多い。バイヤーとの出逢いの場として実績や成果や手応えがあれば友人を紹介してくる。
■Q:合同展では出展者同士が客の食い合いをするのでは?
●吉岡:それは有りますが客を育て、増やすことで自分の客にもつながり売り上げを上げる結果につながる。
■Q:出展する合同展を選ぶにはどうしたらよいか?
●吉岡:事前に自分で来場者となり、商品の価格体や商談している人を見てその合同展が自分に合っているかを決める。また主催者に意見を聞くことも良い方法だと思う。フロンティアでも意見を聞かれたら協力をしている。
例えばフロンティアの場合は東京を中心とした小売店やデパート・デベロップメントが来場するが、7割が小売業者でその場で商談をしてお店で売れるものを買い付けにくるのが特徴。
■Q:合同展に出展すると商品をコピーされることがあるのでは?
●吉岡:売れる商品はコピーされるが、展示会だけでとは限らない。ブランドの良い部分だけコピーされることは有りえるが、コピーされることを恐れるよりはコピーされても行くのだという前向きな姿勢で出展した方が良い。
展示会でコピーされる商品は注目されるブランドや、プレゼンテーションで目立つ商品。その時々のトレンドを取り入れ、さらに価格帯に対して、デザイン性や縫製がよいクオリティの高いものが目を引く。
■Q:創業したばかりのブランドはロットが少なく、知名度は低い、単価が高いという厳しい条件ばかりで合同展でお客をとるのは競争率が高く難しいのではないだろうか?
●吉岡:厳しい条件の中で何を表現し、誰にアピールし、届けるターゲットをはっきりさせて得意分野をアピールする。展示会で客を取るにはコンセプトと情熱が大事。
対象を誰にするのか、コンセプトをバイヤーが理解できなければ仕入れて店に置きづらいので、わかりやすい方が商売はやりやすい。
しかしコンセプトを表現するのが苦手な場合は商品自体がブランドコンセプトを表現するのか、目立つ商品はディスプレー用なのか、売るための商品なのか等解りやすくする方が良い。
■Q:コンセプトを表現するのにアパレルは全身でスタイリングができるのでイメージを引き出しやすいが、雑貨やバッグの見せ方と展示会での売り込み方法は?
●吉岡:バッグだけを見せるのではなくアクセサリーや小物も一緒に見せることで全体のスタイリングを見せてその世界観を広げたほうがバイヤーは買いやすい。
■Q:展示会のスタッフについて気づく点は?
●吉岡:商品を見てほしいという前向きな人、会場で商売をしようという人や積極的に名刺を交換したりする人でないと商品が目に止まるだけでは成果は出ない。展示会で客が少なく成果が出ないという場合も、少なくても客がいればそれなりに何かをつかもうとする気持ちが大切。
成果が出せないところは、客に関心を持たなかったり、スタッフ同士が話をしていたり等スタッフの応対でわかる。
展示会で人が集まっているブースはDMを出したり、電話をかけてバイヤーとアポイントの日時を決めておく等、事前に商談の準備をしている。事前にお客に連絡をして来てもらうのはお金が掛からず良い方法で、商談してブースに人がいれば別の客も入りやすくなり人が人を呼ぶ結果となる。
■Q:合同展と個展の使い分けについて
● 吉岡:個展は既存客が中心で、合同展は新規を考えている。そして展示会に出るときは集客と言うより売り上げ目標を考えて出展した方がよい。また一回出て駄目なところでも何回か出た方が効果がある。合同展で顔見知りになれば信用が生まれ、ブランドの実力と継続性を評価してバイヤーと長い付き合いができるようになる。ブランドの体力が無ければ出続けることは難しいし、成約はしてくれない。
■Q:ブランドのなかには合同展に出て営業が苦手でバイヤーに自分の商品を売りこめない人やバイヤーにうまくプレゼンするきっかけがつかめない人がいるがそういう場合はどうしたらよいのだろうか?
● 吉岡:そういう人は自分の苦手な部分をフォローしてくれるパートナーやプレス等を利用する。また営業の苦手な人は自分の商品の特徴で勝負するのがポイント。売り込みがうまいブランドと勝負するには、営業の苦手なところを克服するより、自分の得意なところや自分の技術を作品で表現して見てもらう。
たしかに合同展では社会性やコミュニケーション能力のある人の方が売り込みに有利ではあるが、話が好きなことと営業がうまいとは別の問題で情熱があることが大切。
■Q:トレンドを追っかけるには大手企業は品揃えも豊富で有利だと思うが、小さいところもトレンドは追ったほうが良いのか、それとも小さいところは個性で頑張ったほうがよいのか。
●吉岡:トレンドはしてもしなくても意識はした方が良い。大きな流れをつかむことがトレンド。
■Q:今年の夏に人気になりそうなトレンドでなにか教えていただきたい。
● 吉岡:それは渋谷で若い人に人気のメンズエッグという雑誌の読者モデルがデザインしたファッションでいわゆる「デリッカー」が今年のトレンドと言われている。雑誌が作ったトレンドであり、夏が過ぎればまた次のトレンドが来るといわれている。ビジネス的に売るためにはトレンド加味はわかるがクリエーションやオリジナリティを大事にしたい場合はそれを続けてほしいという気持ちはある。感性をどう流通させていくのか、売るための商品なのか作品なのか、感性を集中させた作品をいくらで買ってもらえるのか、商品のためのデザイン、芸術性なのか、こだわり方による。
プレステージを買ってもらいたいのかどうかは、ブランド経営者の考え方次第で悩むところ。アーチストで継続的な人は強みだが商品と作品の違いをきちんとする。個展は商売のみだが合同展では商売だけではなくバイヤーにアドバイスを求め、自分の商品を売るための情報を得ることができる。
■Q:合同展を効果的に使い倒すという点では。
● 吉岡:合同展では他の出展者の中で、自分と相性が良い人を見つけて話をすることで、口ベタな人は商売として話をするより友達感覚で気軽に話ができるので自分の商品の説明をする練習にもなる。人の入っている人気のあるブースへは率直に話しを聞きに行くとプラスになる。展示会では学ぶことがたくさんある。        
■Q:また、合同展に出終わって商談はできなかったが名刺のみ交換した人には
● 吉岡:アプローチや連絡をしてフォローをし、きっかけを作りアクションを起こす。もらった名刺をフル活用して次につないでいく。合同展に出る前、最中、後に何をやるかは基本的に自分が考えることだが、吉岡氏にアドバイスを求めた場合はできるだけ協力をしてくださるとのこと。
■Q:合同展に出て成果を上げるのには客の獲得や売り上げ目標を立てて到達する先がないとアクションが取りづらいのではないだろうか。
● 吉岡:フロンティアで継続して出展しているところは戦略のなかで展示会をどう位置づけるかが明確になっている。市場性の厳しさから成果は上がりづらいが、市場に対しての適応性、売れない時期だから売れないのではなくどう売り込むか、発想の転換が必要。苦しいからチャンスがある。景気が悪いからと他の人が何もしない時に売り込むチャンスがある。
■Q:展示会に出る中でブランドのコンセプトについて結果が出なかった場合は自分のコンセプトを変えようとする人、影響される人についてはどう思うか?
● 吉岡:自分のデザインに自信を持って売れると思ったのに、実際は反応が少ない場合の自信のゆらぎと気持ちの持ち方については強くなるしか方法は無い。売れないから売れている流行に乗ることは否定しないが、デザインにポリシーを持っているのに売れない場合、原因は営業なのかプレゼンの仕方なのか、集客の仕方なのか、人のせいにするのではなく何が他と違っているのか反省してみる必要がある。売れないから悪いのではなく、デザインが良いのにその良さがお客に伝わっていないので売れない可能性はある。原因を考えて自信を持ったものは自身を持って売る。
作るのは得意だが営業の下手なブランドは見直す必要がある。方向性をきちんと定めないと技術とデザインに良いものを持っているのに、売れないというは惜しい気がする。自分に共鳴してくれる会社や店が何社かあれば評価をしてもらい、自分を受け入れてもらうことで方向性ができる。
■Q:ブランドの成功と失敗について。
● 吉岡:継続することが成功で、一時的に売り上げがあっても途中で投げ出す人は失敗なのではないだろうか。結果の判断からすると売り上げより継続する人が成功といえる。ブランドの方向を変えながらも継続していくことが成功。例えば売り上げをシーズン単位で考えがちだが長い目でみることが事業として成功していくことで、自分のブランドを続けてゆく力を持ってもらいたい。
■Q:逆境の時期はプラスかになるのか。
●吉岡:逆境にめげていては止まってしまう。自分が何処までできるのか、身の丈を再認識して何処が勘違いして悪かったのかを考えて再トライしてほしい。
フロンティアとしての逆境は市場が厳しい時に評価よりその市場性をどう持っていくかが逆境だと思う。フロンティアとしては商品に自信をもっているので批判を今後の課題としている。市場性が厳しくて商品が売れないことについては一展示会ではどう変えられるものではないと思っている。
■Q:自分が一番つらい時の克服方法は
●吉岡:自分が時代とともにどういうことをしたら良いのか、時代にどう反応したら良いのかを課題として新たな目標を持って登っていく。他人に責任を押し付けるより自分で反省できるタイプの方が次に進みやすい。
■Q:逆境の原因になる展示会でのトラブルは。
● 吉岡:トラブルで一番多いのは支払い関係等お金が一番多い。問題は自分のブランドがどの規模で経営してゆくのかがはっきりしないと、チャンスだと思って投資して金額がどんどんふくらんで、自分の手が届かない額になれば自分のブランドを続けていけなくなるし、信用も失うことになる。
商品を納めたがお金がもらえず連絡がとれなくなるなど、トラブルの原因はすべてお金にある。お金の回収に気をつけることは約束ごとをしっかりしておくことが大切。例えば事前に半金もらうとか。トラブルに会わない保証は無いが意識していることが大事で、被害にあった時は最小限にする。お金がもらえないのに商品だけどんどん納めない。10万払えないところは100万も払えない。ビジネスも意識しないと落とし穴がある。展示会などで色々な人と話をして情報を得る。孤立していると騙されやすいので仲間を広げることが良い方法。
来場者からの質問
■Q:和系ブランドの育て方についてどうしたらよいかと?
● 吉岡:和系ブランドは特殊なジャンルになっている。和系というか和テイストなブランドが4~5年前から出て、そのブランドが人目を引いて和ブームになっている。和系ブームのなかで、それぞれのブランドが表現をして流行りとなっているが、何を和として表現するのか、和のキーワードを時代にどう反映させるのか。例えばタトゥ柄をしていく場合マニアックを追求するのか。タトゥを追求していく中で和とどう融合させていくのか、どうコーディネートしていくのか。ブランドを育てるというより作るという感じで行ったらどうだろうか。
■Q:営業の知識と方法について?
● 吉岡:展示会などで知り合った客には電話やコミュニケーションをとる。迷惑になるだろうという遠慮はビジネスの世界には無い。自分のやりたいことを相手に伝え、積極的に売り込む人の方が好感を持たれる。反応が無くてもDMを出したり、資料を送ったり、名前をどんどん売り込む積極性が相手に伝わって効果的である。
■Q:実力があるのにこれが無いと成功しない必須条件は?
● 吉岡:ビジネスセンスまたはビジネス思考。デザインセンスがあって物を作り、作品を商品に変えて売るという思考がなければブランドとして成り立たない。ビジネスセンスとデザイン資質は相反するように思うが、ビジネスセンスに長けていなくても自分の商品をビジネスに変える感覚をもたないと駄目で、自分が作った商品を誰に着てもらいたいのか、何処の店で、どのシチュエーションで置いてもらいたいのかを自分で表現できなくても対象者がはっきりしていればバイヤーさんに売り込んで次ぎにつなげてもらえる。ビジョンを持っていないと一人よがりになってしまい、誰でもよいから買ってほしいでは却って難しい。
■Q:サーフウェア製造をしている方からサーファーブランドのイメージアップの仕方とそのイメージにあった売り込み先の開拓の最善の方法について?
● 吉岡:サーフ業界は和テイストに近い特殊性が強く、何処の市場性に売り込むかということが問題。対象はサーファーだが本当にサーフィンが好きな人、サーフのファション性が好きで町でもおしゃれに着たい人、リゾート感覚でサーフファッションを着ている人や、各ジャンルに別れていてそのサーフブランドにいかに食い込んでいくか市場性を見ることが大事。サーフファッションは各ビーチやエリアごとにビジネス単位が別れていて、それぞれのエリアのサーフショップは地域に密着している。例えば湘南エリアや鎌倉エリアなどで100メートル位しか離れていないエリアで力関係が保たれている。サーフブランドを売り込むには市場性を見ることが戦略的には大事で、マーケットをキープすることが大切なのではないだろうか。これからはインポートなども増えてパターンもどんどん変わっていくと思う。
■Q:ギャラリーを経営しているが、若手クリエーターに不足している点、デザイナーをとりまく環境で変わってほしい点があれば教えてほしい。
● 吉岡:不足は経験で、変わってほしいものは考え方。これからのファッション業界を変えるのだというくらいの意気込があってほしい。始めから言い訳が入る人が多いが、駄目でもやってみる人の方が一時的に失敗しても何年か先の結果をみると面白い表現をしたりする可能性がある。失敗は早いうちにした方が良い経験になるのでは。10年でひとつのスパンと考えて、3年5年7年10年後のビジョンをどう持つか。例えば3年後に、世の中の状況が変わっていく中で、自分がやろうとしてきた方向性で出来た事と出来なかった事を考えて10年続けていくことを考える。続けていくことが成功で、やめたら失敗ということを考えると、いかにして10年やっていくための力を持つかということを常に考えていかなければ続けらない。一時的な売り上げより経営者として実力をつけることが続けていくことのプラスになる。
シーズンごとに売り上げを考えて一喜一憂するよりは1年を通してどう売っていくかを考えた方が市場の厳しい状況をいかに切り抜けるかの力になる。自分のやりたいブランドをいかにお金にまわして、自分の身の丈を考えていけば継続してゆける。
■Q:きちんとしているブランドと伸びそうなブランドの見分け方について?
● 吉岡:難しい質問ですが、継続して展示会に出展していて、成長するメーカーはブースに活気とパワーが感じられ、商品も消費者に訴えるものがある。前向きになっていない所は一所懸命やってもやる気が無いように思われて伸びていかない。展示会に慣れていない人が展示会に出て営業しても傍から見るとやる気が無いように見えるが、そこを乗り越えて元気に頑張らないといけない。コミュニケーションの質や量が大事。

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